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文壇、などといういささか古風な言い回しに、アイドルという単語をぶつけてくるところが著者の痛快さだ。その小気味よさは、むろん本書全体の切り口とも重なる。
ここで「文壇アイドル」と呼ばれるのは、村上春樹、俵万智、吉本ばなな、林真理子、上野千鶴子、立花隆、村上龍、田中康夫の8人。いずれも1980年代から90年代を中心にマスコミの寵児となった人々だ。これらの著作者がどのように語られ、受け入れられたか(またはおとしめられたか)を追い、彼らスターを生み出した背景について考えようとする。著者の言い方を借りれば、「作家論」論ということになる。
その視点は、知的で公平、そして少し意地悪だ。村上春樹作品にちりばめられた謎の解読に血道をあげる批評家たちは、ロール・プレイング・ゲームになぞらえて「文学オタクのハルキ・クエスト」といなされ、吉本ばななはコバルト文庫など少女カルチャーの末流と解釈、「文芸作品というより……キャラクター商品に近い」と位置づけられる。かと思えば、林真理子と上野千鶴子が「男社会」の中でいかに対照的な受けとめ方をされたか解き明かし、作家として黙殺されることの多い田中康夫の批評性を的確に指摘する。
そうした個々の作家の捉え方もおもしろいが、世の価値観が揺らいだ80〜90年代という時代がこれらのアイドルを必要とした、という分析がなにより鋭い。本書は文化論であると同時に、すぐれた時代論でもあるのだ。(大滝浩太郎)
出版社/著者からの内容紹介
村上春樹に村上龍,吉本ばななに俵万智,みんな文壇村のアイドルだった−書評・作家論からゴシップ記事に至るまで周辺の膨大な資料を渉猟し,1人の物書きをアイドルに作りかえる時代の背景に果敢に切り込む.林真理子,上野千鶴子,立花隆,田中康夫の豪華キャストでおくる.
最近、斉藤美奈子の作品を読む事が多いです。
知識のない私にとって、「目からウロコ」な視点がわかりやすく書かれている彼女の本は、どれもとても魅力的に映ります。
なんとなく、「ですます」口調を使いたくなるくらいに。
(『文壇アイドル論』を読んでみるとわかると思います。)
斉藤美奈子の魅力は、自分の思っている事を(「自分」の立ち位置から)語るユーモアのある文体が大きいと思う。(。。。と感じるのは『文章読本さん江』を読んだからかもしれないけど。)
あと、個々人の文脈を包括するようなダイナミズムを持った構成とか。細かい視点とか。
そんなわけで自分の未熟さゆえに、価値判断の拠り所のない22歳の青年には、軽そうなのに揺るぎなく見える40代のおばさんが、なんだかとても輝いて見えます。
そりゃあもう、ふらふらと寄って行きたくなるほどに。
(蹴り落とされるのがオチのような気もしますが。)
自分しか見えてない(見てない)、僕のように近視眼的な人には、きっと読む前の自分がとてもアホに見えてくるはず。
僕はそこが彼女の作品のいいところだと思います。
彼女の作品を読むたびに、こんな人とは絶対悪口バトルはしたくないなぁ、と思います。
そんな事は全くありえないけど。
日記
新しいバイトが始まった。楽しい。
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